2月3日のシュラ受け

※心が広い人向け・小スカとか

 

 

「ん、っぐうぅ む、ぐ……んうぅーッ

 喉がぐ、と締め上げられて、苦しさに大きく口を開けて喘ぐ。その瞬間に黒々と太く長いものに口内を犯されて、シュラは目を見開いて仰け反った。

 四肢が重い。うねうねと周りを取り囲む敵はいくら斬っても死にはせず、むしろ不快な粘りがシュラの自由を奪っていった。喉を締めた一本と口の中で暴れる一本をそれでもどうにか叩き斬ろうとして、シュラは愕然と瞬いた。

「んむっ、う……うむぅうっ……

 蠢くものが手首や肘に何本も巻き付き、半端に両腕を上げたようなみっともない形で固定している。どうしてか手足に満足に力が籠められなくて、シュラは苛々と頭を振った。

 顎が外れそうなほどに口を開けさせられているせいで、暴れる存在を噛み斬ることが叶わない。喉奥の柔らかいところまでぐりぐりと抉られて、反射的に涙が出てくる。とにかく必要な酸素を確保することを最重要課題と決めて、シュラは幾度も息を吸った。口内から鼻腔に広がる酸味と甘みは決して不快ではなかったけれど、その事実がなんの慰めになるだろう。

 涙ぐみながら侵入者に歯を突き立て、少しずつそれを食い千切る。唇に先端が押し付けられているから、吐き出すことは出来そうにない。無我夢中で咀嚼して飲み下して、やっと責めの手から解放される。

「ん、っ……ぁッ!?

 これで少しは楽になった。浅はかさにもそう思ったシュラの安堵は、しかしあまりに容易く踏み躙られた。

 膝の裏を抱え上げられ、鍛え上げられた身体が宙に浮く。後孔に先端がぴとりと宛がわれ、シュラは蒼褪めて身を捩った。

「ン、っんぅ……ん……

 男の雄のように、切っ先が細く丸みを帯びているわけではないのだ、こんなものが入るはずがない。恐ろしさに腰を揺らし必死に凌辱から逃れようとする姿は寧ろ淫猥な舞いに見えるのだけれど、そんなことに気を払っている余裕などとうに消え失せていた。

 窄まりを必死に締めて腰をくねらせる。強く引き結んでいる唇を恨みがましくノックする一本も決してシュラから離れていかない。分が悪すぎる勝負は当然長くは続かなかった。

「やッ、よせっ……むぐッ、う!?

 下肢を完全に固定される。不穏な気配を察知した瞬間、まずは口内に凌辱者は飛び込んできた。苦しさに呻いたところで、後孔が無理矢理に拓かれていく。

「んぐッ、う、むっ……んんぅううーっ

 みちみちとのめり込んできたもののあまりの太さに仰け反る。思いの外弾力があるそれは痛みを齎すことはない。だが凄まじい圧迫感で腹の奥が重くなって、シュラは不自由な身体をもがかせた。

 肉の戦慄く筒を押し広げ、ぐいぐいとそれは奥へ進んでいく。最奥の更に先を抉じ開けようと、先端が幾度も捩れては暴れ回る。

「ん……っぐ、う、うむうぅッ……

 悍ましい、はずなのに。未知の快感が繰り返しシュラの理性を打ち据えて、そこに罅を入れていく。肉襞が濡れて痙攣し始めて、質量のある存在にむしゃぶりついて懇ろにしゃぶり出す。極彩色の世界が勢いよく明滅して、ほとんど動かせない身体の末端だけが意味もなく空を掻き宙を蹴った。

 いやだ。こんなものに犯されて気をやってしまうなんて。だが練り込まれる快感は加速度的に大きくなってシュラの心身を追い詰める。涙が零れて止まらないのは、屈辱と絶望からか、それとも激しすぎる快楽からか。

「むぅ、っぐ……!?

 後孔の奥。秘められた場所についに押し入られてしまったとき、触れられてもいない場所から、シュラは白濁を滴らせていた。

「っ、ぷはっ、あ……ぁ、」

 殆ど失神寸前になっていたからだろうか。口内をいっぱいに占めていたものが唐突に抜かれて、急に呼吸が突き返される。慌てて酸素を貪っている間にも、責めの手は止まらずに続いている。

「い、やぁっ も、やめ……ひぁぁッ

 もう、これ以上は。明らかに入ってはいけないところに侵入した先端が更に内腑を遡ってくる恐怖にシュラは目を見開いて喉を枯らしたけれど、文字通り聞く耳持たぬものたちに切ない哀願が何の意味を持つだろう。

 無理だ。もう入らない。やめろ、やめてくれ。

 堕ちた雌の甘さを持った懇願が、徐々に切羽詰まってくる。二度目の絶頂を間近に感じて、自分でも全く意識しないうちに、シュラは彼らの名前を呟いていた。

「っあ……ロス…… リア、たす……け、」

 

「……ラ、シュラ、」

「シュラ

「っ、え あ……

 強引に悪夢から引き摺り上げられる。手を握っているのはアイオリアで、シュラを抱き起し痛いほどに肩を掴んでいるのはアイオロス。二対の視線にまじまじと見つめられて、シュラは困惑して小さく辺りを見渡した。

 見慣れた白い壁。旧友が見立てたランプシェードと小さな花瓶。サイドテーブルには読み止しの本。目の前には大好きな二人。磨羯宮の私室はいつもと何も変わらない。

 大きく息を吐いて脱力した恋人を見て、兄と弟も溜息を吐いた。口火を切ったのは兄。

「魘されていたな」

「……そう、だろうか、」

 とぼける言葉を殆ど食うように、弟が詰問調で被せてきた。

「どんな夢を見ていたんだ」

「別に、大した内容じゃない」

 言えるわけがなかった。まさか寝る前に無理矢理食べさせられたあれが、夢の中でまでシュラを苛んできたなんて。色々な意味で恥ずかしいし情けなさすぎる。

 顔を逸らして追及から逃れようとする。ささやかな抵抗で露わになった耳朶に、アイオロスの唇が寄せられた。

「……シュラ」

「ひぃ、あッ!?

 シーツの下に潜り込んでいった手が、はっきりと兆している雄を撫でる。好きで好きでたまらない声に囁かれながら勃起をゆっくり揉みしだかれると、シュラはいつも恥ずかしい声を上げてしまう。

「じゃあシュラは大した内容じゃない夢を見て、ここをこんな風に大きくしてるんだな

「い、やぁ……ちがっ、やッ

「シュラ、寝る前にあれほど抱いてやったというのに……」

「っくぅ、あぁぁッ

 呆れ声で笑ったアイオリアの右手は震える胸の頂を押し潰す。こんな場所で男が雌になってしまうのだと思い知らされたのは二人と夜を共にするようになってから。まるでセックスの真っ最中のように硬くしこって存在を主張している場所を摘み取った獅子座の青年は、そこにごく僅かな小宇宙を流し込んだ。

 ばちん、と敏感な場所を電流が流れて、シュラの視界に星が散る。

 そのまま上り詰めてしまいそうになるのを、しかしアイオロスが許さなかった。

「あ、あぁあああッ!!

「シュラ まだだめだ」

「いぁッ、なん……れぇっ……!? や、だっ、やぁ……ロスっ!!

 根元を強く握り込まれた挙句、会陰に指先を押し込まれては、男の身体は吐精には至れない。苦しくて切なくて気持ちよくて気が狂ってしまいそうなのに、またアイオリアの手が快楽という劇薬を干させてくる。

 首筋に熱い舌を這わせ、アイオロスが再び問いかけてきた。

「それで 誰の相手をさせられたんだ

「し、らなッ……あ、もうっ、いや、リアぁっ……

 追及は意地が悪く執拗だった。眠っている自分がどれほど悩ましく喘ぎ恋人たちの助けを呼んでいたかなどシュラは知り得る筈がないから、何故この兄弟がたかが夢についてここまでしつこく問い詰めてくるのか理解できない。理解できないからくだらない淫夢の内容を打ち明けるのを拒んでいるのだけれど、それが二人には正体不明の凌辱者を庇い立てしているように見える。

 自分が恥を忍んで口を開くしかないのだと快感で沸騰した頭ではわからなくて、シュラは力の抜けた腕で懸命に責めの手に抗おうとする。その所為でますます兄弟が依怙地になるとも知らないで。

「っあ!? ま、って……リア、そ、れぇ……やっ、」

 はしたなく膨れた乳輪と乳首を苛めていた指がそこから離れる。わざとゆっくり胸筋と腹筋を滑り降りていく指先が行きつく先に予想がついて、シュラはいよいよ半狂乱になって黒髪を振り乱した。

 感度を磨かれ抜いた場所に、アイオリアのあの手で触れられたら。

 欲情に濡れた碧の瞳がシュラを射抜く。二人もこの瞬間は、夢について問い詰めたりはしなかった。

「あ、あぁ……ひ、ぁ、」

 瘧に罹ったように全身が震えている。息を詰めて、せめて少しでも衝撃が少ないようにとアイオリアの動きをシュラが縋る眼差しで注視する。

 ふと思いついて、アイオリアは濡れた唇に口づけた。

「ん、むぅッ んぁっ……んんうぅうーッ!?

 強引なキスに驚いたシュラの意識がそこから離れたとき、剥き身を思い切り握り込む。駆け抜ける電流の壮絶な甘い痛みに、骨がへし折れそうなほどにシュラの背が撓った。

 燻る熱を吐き出したくて仕方ない。射精がないままに達した身は、苦しさのあまり少し誤作動を起こしてしまったようだった。

「ふぁ、あ……あぁ、」

 ちょろ……と弱々しい水音。いまだ硬さを失っていない雄からは精液の代わりに恥ずかしい液体がだらだらとだらしなく漏れ出して、アイオロスとアイオリアの手を濡らし始める。

「い、や……みるなっ みる、な……みな……っで……

 萎えていない勃起から零れる尿は勢いこそないものの、その分長く放出が続く。汗に濡れたシーツやその下の寝台そのものはもちろん、兄弟の手や下肢もびしょびしょに濡れて汚れてしまったけれど、二人はそれを咎めはしなかった。

「ふふ、シュラ。おしっこ漏らしてしまうほど気持ちがよかったんだな」

「い、いわな……で、ッあ リア、さわるなぁっ……

 長い失禁の終わりを確認するように、節くれ立った指の腹が先端を擦る。夢の内容を告白する以上の醜態を晒させられて、それでもまだ精液を撒き散らしていない雄は、恐ろしいほどに敏感な状態を保っている。

「シュラ。どんな夢を見たんだ」

 再び唇が触れ合いそうな距離まで顔を寄せられて、またアイオリアに尋ねられる。

 もうなにも考えられない。思考が真っ白に塗りつぶされたまま、シュラはゆるりと唇を開いた。

 

初出:2017/02/03(Privetter)