「ヅラ、お前まだだろ?」
「ヅラじゃない桂だ。な、ッあ!?」
何がまだだ、と問うよりも早く、湯船の中で握りこまれていた。慌てて振り解こうとしても狭い場所で後ろから羽交い絞めにされていては体の自由が利かない。まだ翳りすらほとんどない場所は、すっかり銀時に質に取られてしまった。
「な、なに……っを……?」
「いや、ヅラくんにもね? 男子のデリケートな“事情”を教えてやろーかと思って」
「いらんっ! や、やぁっ、よせぇっ……!」
きっかけはつい先程までの会話だった。最近は何かと理由をつけて一緒に入浴しなくなった高杉について、桂はあれこれと――電気がもったいないとか、いちいち湯を足すなとか、風呂の時間が長くて水音が気になるとか――文句をつけていた。それを黙って呆れ顔で聞いていた銀時に今、何故だかいきなり抱き竦められ下肢の中心を弄られている。
細くくったりとかわいらしいものを、銀時は柔く揉み込む。優しい感覚が不快ではないと桂が理解したところで、下から扱き上げ始めた。敏感な場所を苛めつけずとも、刺激を知らぬ身体はいとも簡単に反応した。
「ひぁっ、あ、あッ!? い、やだ、ぎんとき……それっ、やだっ、」
「“やだ”じゃねェだろ。……まぁヅラくんははじめてだからなー」
こういうときは“きもちいい”って言うんだよ。耳元で吹き込まれた熱い吐息にさえ、桂はふるふると身を震わせた。頭を振り、銀時の腕に縋りつき責めから逃れようとしても、力の抜けた身体では碌に抗うこともできない。勃ってきた、と楽しげに囁く声を耳にしても、それが何を意味しているのかすら理解できなかった。
ただ、先ほどから下腹がずくずく疼いて苦しい。吐き出したい、と思ったとき、桂の弱い抵抗は俄かに激しくなった。
「ぎんときっ、も……いいだろうッ!? はな、せぇっ……!」
「もしかして出したくなっちゃった?」
「わ、かってる……なら、」
「でもさ、俺が手ェ離したらお前立てんの?」
意地の悪い問いかけの間も固くなった場所を弄り倒す手は止まない。柔らかい皮を引き下ろされ、最も敏感な場所をほんの少しだけ触られて桂は駆け抜けた激感に怯えた。どうしよう、早く厠へ行かなければ。せめてここから出なくては。
立ち上がろうとする足が萎えて膝が笑う。桂が焦るのを嘲笑うように、銀時の手はいよいよ剥き身の場所に伸ばされた。そこをゆっくりと揉まれ、掌で捏ね繰られ、桂の声はいよいよ涙混じりになっていた。
「いっ、やぁッ! やだぁ、あ、来るっ!」
「ふつうこーいうときは“イク”って言うんだろうけどな」
苦笑した銀時の言葉が辛うじて耳に入ったのだろうか。追い詰められた桂は、媚びるように、赦しを乞うように呟いていた。
「……い、きもちっ、いい……ぎんときぃっ!」
いく、いっちゃう、とうわ言のように繰り返す姿に煽られて、責める手が激しさを増していく。熱い湯の中、ひくついている隘路の出口をくじるように指先で刺激してやると、細い体が跳ねあがった。
「いくっ、いくぅ……! い、あっ、ああぁッ!!」
びゅく、と吐き出された色の薄いそれを、さっと手桶で掬いあげる。初めての精通に戸惑っているであろう桂に説明してやろうと幼馴染を覗き込んだ銀時は目を剥いた。
「……ヅラ? 大丈夫か、おい!?」
真っ赤な顔を汗と唾液と涙でべしょべしょにして。ぐったり銀時に全身を預けた桂はいくら呼びかけても苦しげに眉根を寄せるばかり。
慌てて桂を担ぎあげた銀時は、この後何が待ち受けているかも知らず浴室を飛び出した。
初出:2015/04/26