「やめろっ! ぎん、ときぃっ……!?」
「だから誰よ、“銀時”って」
「う、あッ!? おく、は、あっ、」
端っから可愛げのない生徒だった。飛び抜けて成績はいい癖に担任の名前一つまともに覚えられない上、敬語も碌に使えない――最もこれはヘラヘラと笑って流してしまう坂本の馬鹿も悪いのかもしれない。
それでも学級委員なんていう苦労の割に実りの少ない雑用が務まるのは桂だけだったから、今日も仕方なく国語準備室に呼びつけていたけれど。
面倒な事務仕事にうんざりして溜息をついた坂田に、「“銀時”はこれ、好きだろう?」なんて苺ミルク味の飴を差し出された瞬間に、堪えていた何かが溢れた。
銀時?と呼び掛ける身体を埃っぽい床に押し倒して。慌てて暴れ出す痩身を抑え込むのは容易かった。
「た……のむっから、一度、抜け……ひあぁッ!?」
「なぁ? お前の言う“銀時”ってのは、同じ男を押し倒してレイプする男なのかよ」
個包装を剥がれて押し込められた小さな飴が、ごつごつと中でぶつかり合っている。体温で溶けてべとつくそれを押し込むように腰を動かせば、ほっそりとした身体が跳ね回って震えた。
ネクタイで一纏めにして椅子の足に括り付けた手首に、薄っすらと擦過傷ができている。それすらも坂田の中に潜んでいた加虐心をいたずらに煽り立てて、桂に突き立てた剛直を大きくさせる。
同じくはち切れそうになっている桂のものを掴み上げて、あざ笑うように坂田は呟いた。
「それとも何……もしかして“銀時”とはこういう仲だった? ヅラ君はオトコにチンポ突っ込んでもらってひぃひぃ善がってたワケ?」
さぁっと白皙に朱が走る。聞くに耐えない侮辱に流石に坂田を睨みあげた桂だったけれど、最も敏感な場所を質に取られている以上、いじらしい抵抗も長くは続かなかった。
締め上げる右手を緩めぬまま、左手で切っ先を捏ねくり回して抉る。鋭い視線は見る間に潤み、桂の瞳から生理的な涙が零れ落ちた。
「ああぁあッ! や、いやだぁっ! 手、を……はなせっ、――――ッ!?」
嫌なこった、と。内心で意地悪く吐き捨てて坂田は抽送を再開した。中を弄くり回していたときに見つけた勘所を擦りながら、最奥を激しく突き上げる。床を蹴り、ずりあがって逃げようとする足を肩に担ぎ上げ、その瞬間に向けてひた走る。
「やだぁっ、ぎんときぃっ! 手、はなしてぇ……!」
限界を超えて身体に練り込まれていく快楽に、逐情という区切りが許されない拷問に、ついに桂が堕ちた。ごめんなさい、許して、イカせて。涙まじりにそう哀願される度、坂田の中の苛立ちは増していく。
「おねがっ、イキたいっ……ぎん、んぅ……!?」
――銀時。
そう名を紡がれる前に、己の唇で桂のそれを塞ぐ。苦しみを吐き出す手段を全て奪われて半狂乱になって桂が身悶えるのをのし掛かった全身で感じて、ほんの少しだけ胸がすく思いがした。
「ん、むぅっ……んうぅッ……!?」
桂には吐精を許さぬまま、己だけが全てを注ぎ込む。何もかも奥に吐き切ってから、ずるりと萎えたものを抜いた。
唇を自由にしてやれば、殆ど吐息ばかりで桂は小さく呟いた。
銀時、どうして。
「だから、俺は“銀時”じゃねえ……!!」
身の一番奥を染め上げてやっても、どうしてかその想いは伝わらない。
初出:2015/04/05