彼らはうつくしいこどもだった。
いっそ作り物めいた美はこれほど幼くして既に完成され始めてさえいて、まるきり同じそれが二つ並んであるのだから人目を引く。
片手で数えるに足る年齢の双子は——大いなる星に導かれし子によく見られることであるが——全く年齢不相応な落ち着きで教皇の前に膝を折っていた。
サガと名乗ったのは兄。
いずれは聖域を統べる教皇となり、女神を目覚めさせ女神たらしめる双子座のこども。
カノンと呼ばれるのは弟。
海皇に魅入られ地上に悍ましい災いを齎す双子座のこども。
この日、桜貝の如き爪一枚から髪の一筋に至るまで同じ小さき子らは、ただ運命によってのみ分かたれた。
——母は一人で私たちを産み落としました。
——先に取り上げられた私を抱いて、一度だけ乳を含ませて世を去ったと……。
——弟は母の腕を知りません。家族の愛を知りません。
——だから私が、弟を愛さねば。
——猊下! 何故カノンは双児宮から出ることさえ赦されぬのですか。
——アレは私の弟です。実力は私が一番知っております。
——訓練すら受けられないのは得心がいかぬのです! 必ずや聖域の力となるでしょうに……。
——どうかカノンにも聖衣を……いえ、せめて、日の当たるところを歩ませてほしいのです……!
——聖闘士としてでなくとも構いません……私の弟としてでなくたって、
——どうして、カノンだけが、
——私が、教皇になれば……カノンに双子座の聖衣を譲り渡すことができるのですか……?
——アイオロスは……アイオリアと肩を並べて戦えるのですね……。
——シオン、教皇……、
宇宙の意志に、人が介入することなど結局のところできはしない。
それに気がついた日にはもう、何もかもが遅かった。
「教皇、射手座のアイオロス、双子座のサガまいりました」
「……なにか御用でしょうか」
運命に爪を立てた分、指先は血に塗れて酷く無様。
抗えないと気づいたのは自分だけで、子らは今も戦っているのだろう。
それを真っ向から叩き折って。
全ては来るべき未来のために。
祝福なき教皇は、やがて少女を女神にする。
初出:2016/12/27(Privetter)